安達哲という漫画家はすごい。
何がすごいって青春のダークサイドを描く表現力がすごい。
しかしどこかデジャヴを感じるのは自分が見てきた鬱々とした残酷青春ものに通じるところがあるせいだ。
古屋実の「シガテラ」、浅野いにおの「うみべの女の子」、押見修造の「悪の華」。
安達哲が昨今の傑作残酷青春モノの一つのルーツであることは間違いない。
「さくらの唄」
まず挙げるべきはなんといってもこれだろう。
前半はよくある多感な男子高校生の日常。
自分の自意識に押しつぶされそうになりつつも同級生の女の子に恋をしたりまたは美しい女教師に性的興味を抱いたり。
しかしなんといっても後半。
主人公の身内がヤクザの頭だと発覚してからの暴走&破滅加減が半端ではない。
暴力という名の権力を使い(半ば無理やり)恐怖と性に普通の日常が染められていく。
終盤は頭を打ち抜かれるようなショックの連続。
「幸せのひこうき雲」
超えちゃいけないラインを超えた「さくらの唄」から更に一歩超えちゃいけないラインの先いってしまったような禁断の漫画ともいうべき作品。
一巻で完結という短くて読みやすい容量ながらその質はとてつもなくディープ。
この内容だと今だったらおそらく出版不可能なのではないだろうか。
舞台は田んぼの風景広がる片田舎。
主人公は青春もののスタンダードである高校生ではなく小学生。
担任は田園風景に不釣り合いなほど垢抜けた美しい女教師。
ここまで言えばもうわかる人はなんとなく予想つくかな?
まぁとにかくエゲツナイ内容です。
「キラキラ!」
上の二作品に比べてかなりソフトでギャグもありつつバランスの取れた作品。
高校という日常と芸能界という非日常の狭間で生きる男女。欲望や嫉妬が入り混じった人間模様がとてもリアル。
しかしちゃっかり鬱要素、ショッキング要素は入ってるし、次作さくらの唄への片鱗ともいうべき破滅要素も入っててただの青春漫画ではないというところは押しておきたい。
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